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混浴露天風呂・痴漢ワニに囲まれて
第7章 泡盛
話が一周回って、

「というかさ。茉莉子さんは母親なのに息子さんに怒らないの」

「そうだよ。俺の母親なんて、顔見るたびに怒り心頭で『こんな成績で、医学部の推薦が取れると思っているの!』『何なのこの点数!90点って、あと10点あったら100点なのに!』とか、模試で100点を取れとか、いや、マジで、小学校のテストじゃないっ思っても言わせないくらいの剣幕で怒鳴り散らして大変だった」

「それは、お前の母親が、ヒステリックだからで…」

「それはそうだけどさ」

「一度も、怒らなかったの?」

壮介が将星と征人の話を制するように、止めて、茉莉子に訊いた。

「自分の進路だから、口出ししても…。それに、わたしが言って聞く息子ではないから」

答えを聞いた壮介が、

「だとしても、『話を聞きなさい』とか言ったりしなかったのですか?」

と、重ねて訊くと、

「親の価値観を押し付けても…と思ったのと、父親と話して決めたのなら…と思ったわ。息子たちにとって、わたしは不要な母親だった…」

と、茉莉子が静かに答えて、泡盛の入った湯呑に口を付けた。

「掃除、洗濯、食事までしてくれる母親が不要なわけがない。だったら、俺の母親なんて、掃除もしない、洗濯も放り込んで乾燥まで、畳もせずに、俺に『着る服は洗濯槽から取ってきなさい』で、食事は『冷凍庫から好きなのを取ってチンして』だから、よっぽど、その方が不要ですよ」

「そうそう。俺の母親も同じ。『冷凍食品を選んで食べろ』と息子に言いながら、自分はいつもホテルのランチバイキングにランチビュッフェとか、コース料理で『お腹いっぱいで夕飯、作れない』とか…どっちが不要って、俺の母親ですよ」

征人と壮介が肩をすくめて半笑いで、泡盛の入った湯呑を飲んだ。3人を見る茉莉子の目が憐憫に溢れた。小学校から大学まで一貫で、大学の医学部。世間では御曹司で通るような、羨まれる境遇なのに、家庭内は、そんな感じだったなんて…。茉莉子は思った。

でも、それは、わたしも同じかも。息子たちは超難関の進学校に進み、長男と次男は、国立大学医学部。周囲は茉莉子を羨む。でも、現実は、その息子たちから疎まれて、蔑まれ、相手にされていない…。
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