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混浴露天風呂・痴漢ワニに囲まれて
第3章 想い出
茉莉子は、川沿いの町道を歩きながら、なんとなく、視線を感じていた。角を曲がるときに、チラッと見ると、バイクに跨っていないが、駅前で見かけたバイクに跨っていた大学生3人らしい姿が見えた。

過疎化していて、人影は疎らだった駅前で、あの3人は目立っていた。髪型や服装も垢抜けていて、歩いてくる間、すれ違った地元の若い人とは違う雰囲気。

特に一人が、息子に面影が似ていたこともあって茉莉子は覚えていた。

その3人がどうして、あの橋の三叉路にいるのかしら…。

この道をあの駅から歩いてきたのは、茉莉子しかいなかった。考えられるのは、自分を追いかけてきているということくらい。

なぜ?

45歳の茉莉子には、自分が性的な対象になっているという意識はなかった。大学生の息子を持つ母として、同じ大学生。

何か用があるのかしら?

と思って、もう一度、角まで戻ったが、もう、彼らの姿はなかった。

首を傾げながら、宿へ向かった。

宿に着くと、以前、お世話になった時と同じ和服姿の女将さんが、

「早いお着きで」

と、出てきて、招き入れてくれた。

70歳代の女将。そして、後ろから声が聞こえて出てきたのは、旦那さんの調理と番頭をしている男性。そして、女将さんの妹の仲居さん。揃いも揃って70歳代。あれから10年。茉莉子も35歳から45歳になったように、60歳代だったスタッフも70歳代に。女将さんがフロントと調理まで担当し、仲居さんが営繕などもするという家族経営に近い。

小さな和風の庭がロビーから見える。

案内されたのは、二階に三つある客室の一つ。

「今日は珍しくもう一組の予約が」

と、3人のことを話し始める女将さん。

「男性が3人。1年前に一度、泊ったことがある医学部の学生さん。前のときは、女の子連れで、騒がしかったけど、貸し切りだったから問題なかったのだけど、今日は3人だけみたいだから」

「そうなのですね」

茉莉子が応じると、

「もし、うるさいようだったら、注意するわ。ま、医学部の学生さんというだけあって、勉強もできる感じで、前回も騒いでいたみたいで声が私たちの住むところまで微かに聞こえていたけど、露天風呂も部屋も綺麗に片付けて、掃除までしてくれて」

と、女将さんは茉莉子に安心してもらうためか、女将さん自身が安心しているからなのか、話していた。
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